夢を具体的に描き、持ち続ける

しかし、後日談があります。

NHKへ入り、地方記者を経て29歳で東京へ戻ってくると、私は気象庁担当記者になったのです。

『池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力』(著:池上彰/講談社)

台風が来ると、気象庁から生中継をして、予報官にインタビューをします。深夜もずっと放送を続ける場合には、予報官を休ませてほしいということで、代わりに私が予報を伝えます。

気象庁からカメラに向かって「台風がここまで来ています、この地域の方は気をつけてください」などと言っていると、「あれ、子どものころの予報官の夢が、ある意味叶ったんじゃないの」と気づきました。

結果的に、地方記者と気象予報官、両方の夢が叶ったというわけです。

フリーランスになった後には、新聞に連載を持てるようにもなりました。新聞記者が自社のコラムを書くには、相当筆が立つと社内で広く認められないと難しいですが、私は外部執筆者としてたまたま横入りするようなかたちで、書く機会をもらったのです。

NHKか新聞記者かと迷っていたころの夢も叶ったというわけです。

やはり子どものころの夢はずっと持っていると、そのとおりにはならなくても、いつかどこかで一部でも実現することがあると思うのです。

真っすぐ進まなくても、途中でよそ見や寄り道、休憩をしてもいい。いつか何らかのかたちで、あなたの目指す夢のゴールにたどりつくことはできるかもしれません。

しかも、夢はないよりもあるほうが、人生は楽しくなります。ぜひあなたの好きなこと、やってみたいことを起点に、想像力を働かせて、自分の将来の夢を具体的に描き、持ち続けてほしいなと思います。