「飛行機人間」を育てるべき
英文学者の外山滋比古さんは、ベストセラーとなった著書『思考の整理学』の中で、人に引っ張ってもらう「グライダー人間」タイプと、自分でエンジンを持って飛ぶ「飛行機人間」タイプがいるとたとえていました。
つまり自分の頭で考えたり想像したりできない人はグライダー人間で、できる人は飛行機人間だということです。これは非常にいいたとえだと思います。
「自由に自分の考えを書いてみて」と言うと、書けなくなってしまう。日本は、そういうグライダー人間ばかりを教育してきたのではないかと、外山さんは書かれています。
私も、大学生の大半がグライダー人間だと感じます。グライダーは、引っ張っていく飛行機にぶら下がっているだけですから、予定したルートを外れることはありません。
一方、自力で飛行する人は、ルートを外れ、とんでもないところへと行くことがあるわけです。
子どものころにそういうことをすると、日本の教育は「そんなことしちゃだめだ」「こっちに戻ってきて、そのままぶら下がっていなさい」と、グライダー人間にするべく引っ張っていきます。
自分のエンジンで飛ぶ人ばかりだと、あちこちに行って収拾がつかなくなるからです。しかし本当は、飛行機人間を育てるほうが、長期的に見て大事なことなのですが。
※本稿は、『池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力』(講談社)の一部を再編集したものです。
『池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力』(著:池上彰/講談社)
「生成AIに負けない人材か」が問われる時代というだけでなく、想像力は、働き方、生き方を変える原動力。池上先生は、「タテの想像力」と「ヨコの想像力」とし、学校や職場で教えてくれない想像力の伸ばし方を具体的に伝えます。
パンデミックや戦争が私たちの前に立ちはだかっても、どうすれば世界はよくなるか想像することが突破口に! 現実社会をテキストに、想像力のリミッターの外し方を教えてもらいましょう。