親と子、20年違いのバリケード封鎖
『ぼくらの七日間戦争』は、少年少女たちが廃工場に立てこもる話である。バリケード封鎖である。先生は彼らを説得しようとし、親たちは心配をして見守っている。機動隊が突入する展開も描かれる。原作で、彼らは立てこもった廃工場を「解放区」と命名している。
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「解放区ってのはだな……」(略)
「おれたちがまだ生まれる前、大学生たちが権力と闘うために、バリケードで築いた
地域のことさ」「お前、どうしてそんなこと知ってんだ?」
「おれのおやじとおふくろは、大学時代に機動隊と闘ったんだ。お前んちのおやじだって、やったかもしれねえぜ」
「おれ、聞いたことねえな」
「じゃあ、ノンポリだったんだ」
「ノンポリ?」
「お前んちのおやじみたいに、学生運動には無関心だった連中さ。だから、いい会社に入れたんだよ。おれんちなんか学生運動やったおかげで、就職するとこねえから塾をはじめたんだ」
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(宗田理『ぼくらの七日間戦争』[角川文庫、KADOKAWA、1985年]より)
「ノンポリ」も「解放区」も中学生たちの親世代が学生運動で使っていた用語。ちなみに、僕は、この映画を15歳で映画館で見たが、学生運動が下敷きになっていることには、当初はまるで気がつかなかった。
映画を見た少し後に、ノベライズ版を読んで、はじめてそのことに気がつく。原作は宗田理。1985年にシリーズの1作目が刊行されている。
物語の中に「解放区」や「バリケード封鎖」を知っている子と知らない子がいるのと同じである。僕も、さほど親の世代のことを知らなかったひとりだった。
普段は、仲がいいわけでもない子どもたちが学校の管理に反発して共闘するという構図は、かつての全共闘の理想が重ねられているのだろう。男女の区別なく連帯する姿も、かつての学生運動ではなしえていなかった姿。