現実とは違い、管理教育に大勝利する生徒たち

この物語の悪役は生徒指導の教師たちである。

「そういうちゃらちゃらした愛情がこういう馬鹿げた事態を招いたんです。話にならない」

という台詞は、大地康雄が演じる中学校の生徒指導の教師が発するもの。この教師は、学生運動世代よりも、上の世代なのだ。

そして、その学生運動世代が子どもたちの教育に失敗したという持論の持ち主でもある。あの世代は、運動同様、自由放任のモットーを子育てに持ち込み、“無気力世代”を生み出してしまったというのがこの先生の主張するところ。

つまり、それが団塊ジュニア世代である。彼らは、登校の決められた時間も守れない。横暴教師は、自分たちが親の代わりに子どもをしつけているという認識を持つ。管理教育の代弁者である。もちろん、この教師はのちにこてんぱんにやっつけられる。

映画のおもしろさは、現実の学生運動と違い、生徒側が大勝利を収めるところにある。宮沢りえも、豪快なキックで教師を打ちのめす。その後の宮沢が映画で見せることのなかった大胆なアクションである。

※本稿は、『1973年に生まれて: 団塊ジュニア世代の半世紀』(東京書籍)の一部を再編集したものです。


1973年に生まれて: 団塊ジュニア世代の半世紀』(著:速水健朗/東京書籍)

ロスジェネ、超氷河期、お荷物と言われ続けた団塊ジュニア世代のど真ん中ゾーンも、ついに天命を知る50代に突入。

そんな世代が生きてきた1970年代から2020年代にわたる、日本社会、メディア、生活の変遷を、あるいはこの時代に何が生まれ、何が失われたのか――を、73年生まれの著者が、圧巻の構想力と詳細なディテールで描くノンフィクション年代記。