その年頃ならよく知っている。その上少々発達障害気味の、ということはつまり家族のDNAをみゃくみゃくと受け継いで、カノコもサラ子もこんな感じだったなあという、いかにも「うちの子」らしい子なんである。

アイダは、あたしに、ネズミの習性をくわしく教えてくれた(アイダはネズミを飼っている)。ドナー隊の悲劇(一八四六年にあったアメリカ西部の開拓団の食人事件)についてもくわしく教えてくれた。お話の作りっこもした。散歩中に大きな木を見たので「大きな木に出会ったときは、まず『すごーい』と声をかけるのが、木とつきあう方法なんだよ」と教えたら、アイダはすなおに木に向かって「すごーい」と日本語で声をかけた。

カノコがおもしろかったのと同じくらい、アイダがおもしろかった。弟はまだ幼くて、そこまでじゃない。アイダとしゃべってると、ボクもボクもと口を出してくるが、姉ほど話についてこれない。年齢も違うが性格も違うと母親カノコが言っていた。

次の日の朝は学校に連れて行った。門の前でアイダをハグして「じゃーね」といったら、アイダが「じゃーね」と言って門の中に入っていった。日本語をしゃべらない子が、祖母の日本語に自発的に日本語で返してくれたわけで、いやもう、祖母心がきゅんきゅんした。それ以来あたしは恋に落ちたみたいにアイダとメールをやりとりしている。