「来年も絶対にコンサートに来よう」と決意した

そして、谷村さんは舞台から降り、観客と握手をしだした。私が手を差し伸べると握ってくれた。谷村さんの手が冷たくて驚いた。アリス時代、そしてソロになってからもコンサートを続け、名曲を歌い上げ、観客が爆笑するトークをしている。慣れているはずだ。しかし、手が冷たい。緊張し、真剣勝負をしている。でも笑顔を保っている。素晴らしいではないか。

コンサートの後半で、谷村さんは「長かったです。いろいろなことがありました。でももう終わりです。振り返らない、石橋は叩いて渡らない主義です」と語った。

私は、「一家の苦境をしのぎ、来年も絶対にコンサートに来よう」と決意した。

そのコンサートの翌年に家が売れ、必死になって次に住む家を探し、引っ越すことができた。父はその後、難病であることが分かり、私が46歳の時に亡くなった。

私が谷村さんのファンになったのは、30歳を越えてからだった。

何故もっと早くからファンにならなかったのかと、自分のまぬけぶりにあきれるばかりなのだが、それには理由があった。