(撮影◎中西正男)
92歳を迎えた喜劇役者の大村崑さん。86歳から肉体改造に乗り出し「今が一番健康」と言葉に力を込めます。筋トレによって得た元気がさらに広げた“新しい景色”とは。
(取材・文・撮影◎中西正男)

前回「西川きよし『吉本新喜劇で通行人Aだった僕に、横山やすしさんが声をかけてくれた。1日でも長く舞台に立って伝えるのが僕の供養』」はこちら

86歳から続けている筋トレ

86歳から妻からの勧めもあって、筋トレをやり始めたんです。本当にね、体がウソみたいに変わりました。それまでは、おじいちゃんそのものというか、歩き方もヨタヨタしているしね。趣味は「コケること」というくらい、しょっちゅうコケてました(笑)。

ただ、転倒から一気に老け込んだり、生活が変わったりすることも非常に多いので笑いごとでは済まない。そう考えると、筋トレをして、歩き方も、姿勢も、さらには考え方まであらゆるものが変わりました。

歳をとっていく中でね、何より悔しいのは「オロナミンC」のCМで「元気ハツラツ!」とずっと言ってきたのに、元気でなくなっていく。これは忸怩たる思いの極みでもあったんです。それが今92歳で心から「元気ハツラツ!」と言える。こんなことがあるんだなと。

ここまで筋トレが続いている理由。これもね、実は役者の要素が根底にあるんですよ。若くて達者なトレーナーさんが最初にフォームを見せて「こんな感じで持ち上げてください」と見本を示してくれる。そこでね、トレーナーが驚いたんです。「崑さん、すごいですね!一回見ただけで完璧なフォームです。若い人でも、すぐにはできないですよ」と。

これはね、やっぱり芝居の力です。僕らの時代は特にですけど、芝居なんて誰もいちいち教えてくれません。「見て盗め」と。先輩方からしたら「自分が必死になって覚えた技術をなんで教えなアカンねん」となりますし盗むしかない。その目がまさか筋トレで役立つとは思ってませんでしたけど、そのおかげで長続きしています。

ライザップでトレーニングする大村さん(大村さんInstagramより)