上乗せのサービスができるように
そうやって褒められると、純粋にうれしいんですよね。連合艦隊司令長官・山本五十六の言葉じゃないけどね、本当にそうですよ。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」。まさにこれです。
それとね、体が元気になってくると、この歳になってまた発見ももらいました。もともと僕は若い頃に肺病を患って、右の肺を摘出してるんです。なので、常に健康に不安があったし、年齢を重ねると、余計に不安が大きくなって「無理をしない」ということを心がけるようになっていきました。
芝居で立ち回りをする時でも、セットで大きな木を作っておいて、その前である程度立ち回りをやったら、木の裏に行って酸素ボンベを吸う。そうやって僕が休んでいる間、逆にその木から出て行くのが後輩の浜裕二、後のチャーリー浜ですよね。彼は僕と顔が似ていたので、吹き替えとして出て行って(笑)、また立ち回りの続きをやる。そんなことをして、体を労わりながら仕事を続けてきました。
でも、今体を鍛えて体力的にも余裕が出てきたので、さらに上乗せのサービスができるようになった。今だったら、吹き替えを使うどころか、自分が予定以上に立ち回りをするだろうし、講演会でも実際に時間以上にプラスアルファのトークをしたりもしています。
そうすると、お客さまは本当に喜んでくださるんですよね。こちらがもう92歳になっているから「あの年齢の大村崑がさらにサービスをしてくれた」という感覚もおありなのかもしれませんけど、大きな拍手をいただけるわけです。
そこで思い出したのが、子どもの頃に見た親父の姿だったんです。