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幼い頃から、「ユーミンは《人生の教科書》だった」というJUJUさん。音楽性はもちろんのこと、ユーミンの曲に登場する女性たちの生き方に、今もなお影響を受け続けていると語ります。そんなJUJUさんにとって長年の夢だった、ユーミンのカバーアルバム『ユーミンをめぐる物語』を3月16日にリリース。プロデューサーは公私ともども、ユーミンのパートナーである松任谷正隆さん。「ひこうき雲」や「リフレインが叫んでいる」など、懐かしのヒット曲に加え、ユーミンが今回、JUJUさんのために書き下ろした新曲も収録。JUJUさんが、なぜこれほどまでにユーミンに惹かれているのか、そして、そもそもなぜ歌手になる道を選んだのか――意外な素顔がこぼれるお話の数々を伺いました。(構成◎内山靖子)
生き方をユーミンの曲が教えてくれた
最初にユーミンの曲を聞いたのは、まだほんの子どもの頃でした。ちょうど、『Delight Slight Kiss』が発売された時期で、ある晩、親に隠れて夜ふかしし、こっそりラジオを聞いていたら、「ユーミンのデビューアルバムから最新アルバムまで、毎晩、1枚ずつ紹介していきます」という番組の初日だったんですよ。
1曲目の「ひこうき雲」を聴いたとき、すべてにおいて《初》すぎて、ものすごい衝撃を受けました。もともと、私の周囲の大人たちは色々な音楽を聴いていて、演歌やジャズや歌謡曲も、物心ついたときから幅広いジャンルの音楽を自然と耳にしていたんです。
でも、ユーミンの曲は、それまで聴いていた日本の歌のどれとも違った。こんな歌詞やメロディも、こんな声も今まで1度も聴いたことがない。2曲目の「曇り空」を聴いたとき、「なにもかもがすごすぎる!」って、ノックアウトされちゃって。それから毎晩、そのラジオ番組をカセットデッキで録音。それが私とユーミンの出会いです。
音楽性だけでなく、ユーミンの曲は1曲ごとに世界が広がっていて、人としてのあり方を教えてくれるところがすごいなぁって。たとえば、今回のカバーアルバムに収録した「真珠のピアス」では、ヒロインの女性は恋人に裏切られて痛い目にあうけれど、それでも自分の意地を通して、絶対にカッコ悪い別れ方はしない。すがすがしいまでの女っぷり。「自分の生きる道は自分で選ぶ」女性って、なんてカッコいいんだろうって。私自身は、もともと、ヘタレな性格なので、今でもユーミンの描く女性像に憧れながら生きているところがありますね。
日本の音楽界で歌手デビューして、あるテレビ番組の企画で初めてリアルなユーミンと一緒に歌うというお話をいただいたとき、あまりにもユーミンが好きすぎて、最初はお会いしたくなかったんですよ。「ユーミンの目に自分はどう映るんだろう?」って考えたら、すごく怖くなっちゃって。とはいえ、私の「ユーミン愛」を知っているからこそ、周りのみなさんがおぜん立てしてくださったわけですから、これはもう腹を決めて会いに行くしかない!
その日のことは、あまりにも緊張しすぎて、記憶がほとんどありません。今までずっと、お参りに行っていた神社の奥から、いきなり神様があらわれた、みたいな感じで(笑)。でも、結局、そのときの出会いが今回のアルバムにもつながっていったので、あのとき、勇気をふりしぼって会いに行って、本当によかったと思っています。