1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト◎筆者)
「あんな大人になりたい」と素直に思えた対象
「坂本龍一さんが死去」
日本中にニュースが駆け巡ったのは2023年4月3日。1月には高橋幸宏さんが永眠。ショックをうけたのは、私だけではないはずだ。
青春期、YMOの曲を聴き、スネークマンショーに笑い、「ライディーン」で踊った。「い・け・な・いルージュマジック」で化粧をして歌う姿、「君に、胸キュン。」みたいなポップスも忘れられない。YMO(細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一)は私たちの憧れだったし、数少ない、世界に通用するアーティストだ。「教授」と呼ばれた坂本龍一さんは特に、映画音楽で世界的な評価も受けた。素敵だったのは、彼らはどんなに売れても尊大になることがなかった点。
政治家や官僚には絶対いない「あんな大人になりたい」と素直に思えた対象だった。なのに突然、2人もいなくなった――――。
2023年は、私たち昭和35年から45年生まれくらいの世代にとって、「坂本ロス」の年だったと思う。「戦場のメリークリスマス」を聴きたくてYouTubeを検索すれば900万回を超える再生数。世界が教授の死を悼んでいると思った。彼の功績を紹介したくて『戦場のメリークリスマス』を取り寄せた。『愛のコリーダ』『青春残酷物語』などで高名な、大島渚監督作品で、私が高校生の1983年公開。