縄文系・弥生系のがんリスク
がんの県民性には、日本人の起源も関係しています。
もともと日本には縄文人がいましたが、そこに弥生人が渡来して大和朝廷をつくりました。渡来人のゲノム(遺伝情報)は大和朝廷があった近畿を中心として中国地方・中部地方に残っています。結果的に先住民族である縄文人は北と南の辺境に追いやられました。縄文人のゲノム比率を見てみると、鹿児島・沖縄や東北の岩手・青森が多くなっています。
<白血病は沖縄県などに多い(縄文系のがんリスク)>
ヒトT細胞白血病は主に母乳で感染するウイルス(HTLV-1)が原因の白血病です。一般的に、白血病は小児に多いのですが、このヒトT細胞白血病は30~50年の潜伏期を経て大人だけが発症します。
このウイルスは特に南九州・沖縄・東北に多いことがわかっています。この地域は縄文人のゲノムが色濃く反映されていて、結果的に白血病が多いという結果になっています。
<お酒によるがんリスクは近畿・東海・中国地方で高い(弥生系のがんリスク)>
弥生人はお酒による発がんリスクが非常に高いとされています。
お酒を飲んで赤くなる現象を「エイジアンフラッシュ」といいますが、これは中国の東北地方の一部、朝鮮半島、日本列島くらいでしか見られず、同じアジアでもインドネシアやフィリピンには赤くなる人がいません。赤くなる原因はアセトアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)というもので、日本人の45%はこのALDH2の遺伝子変異をもっているといわれています。
縄文人はこの遺伝子変異をもっていないため、縄文人が多い北と南の辺境の人たちはお酒に強く、飲んでも顔が赤くなりません。逆に、弥生人が多い日本列島の中央部、近畿・東海・中国地方の人たちは、お酒に弱く、顔が赤くなります。
赤くなっているということは、発がん物質が体の中に蓄積しているということ。赤くなる人が3合のお酒を飲むと食道がんになるリスクが50倍になります。
このように、同じ日本人でもさまざまなリスクがあります。大切なのは、自分のリスクを知ることです。