「そんなふうに突飛な行動をする夫を面白がっている自分もいるんです」(撮影:宮崎貢司)
2023年9月末、33年間アナウンサーとして勤めたNHKを早期退職制度で辞めた武内陶子さん。思いもよらず、新たなスタートを切った心境は――(構成=内山靖子 撮影=宮崎貢司)

<前編よりつづく

家事も育児も「ご機嫌システム」で

私はもともと、くよくよ悩むより行動したいタイプ。だからでしょうか、どんな仕事を振られても楽しく取り組めるような「ご機嫌システム」を、無意識のうちに構築してきたように思います。

家事もねぇ、「なぜ、この山のようなお皿を私が洗うんだろう?」ってイラッとしますけど、他人のせいにすると怒りが増幅するでしょう。だから、「私がきれいにしたいと思っているから洗うんだ」と気持ちを切り替えるようにしているのです。すると、ピリピリしていた心もかなり和らぎます。

ただ私、夫育てには失敗しまして(笑)。「これ、洗っといてね」「あれ、片付けておいて」と頼んでも、「は~い」という返事は返ってくるものの、実際にはぜんぜんやってくれない。

45歳で双子の娘たちを産んだときのことですが、当時は長女もまだ6歳で、そこに0歳の娘が一気に2人も増えて、家事も育児もてんてこまいの最中に、夫が「ちょっとリオに行ってくるから」って。

「え、リオって、どこのお店の名前?」と尋ねたら、「いや、南半球のリオデジャネイロ。人生で1度はリオのカーニバルを見ておきたいと思って」とニコニコしながら言うんです。そのときはさすがにブチ切れそうになりましたけど、結局「まぁいいか」と送り出しました。

そんなふうに突飛な行動をする夫を面白がっている自分もいるんです。実際、南米最大のお祭りを見に行くことは夫の仕事にも役立ちますし、現地でビデオをたくさん撮ってきて見せてくれたので、自分が知らなかったことを知るいい機会にもなりました。