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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。今まで自分で働いて自分の食い扶持を稼いできた独身女性たちは、定年後の住まいをどう考えているのでしょう。それぞれ個別の事情もあるでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

「元気なうちに終活を。還暦前に中古マンション購入した栄子さん。物を処分し、1DKに荷物を収めた」はこちら

購入は大正解、部屋に大満足

東北の県庁所在地で生まれ育った介護福祉士の栄子さん(仮名、60)は、いま高齢者福祉施設の職員です。両親はすでに他界、実家には兄が住んでいます。栄子さんはアパート暮らしでしたが、職場の先輩に「年を取ったら家を貸してもらえない」と聞いて、数年前から中古マンションを探し始めました。

当初は40平米1LDKを狙っていましたが、なかなか物件が出ません。それに、多くの高齢者を見てきた中で、年を取ると動けなくなり、広い家は不必要だ、ということも分かってきました。広さは30平米弱で我慢して、立地優先で、貯蓄で買える価格帯の物件を探しました。結果、3年前に、いま住んでいるマンションを現金で買えました。交通利便性が良く、日常的な買い物や通院に便利な、駅近のエリアです。栄子さんは引っ越しを機に、積極的に断捨離も始めました。

新居では、栄子さんは予定通り、室内を部分リフォームしました。間取りと、三ツ口コンロ付きのシステムキッチンはいじりませんでした。でも、2点ユニットバスとトイレは200万円近くかけて新品に交換し、水回りの床はこじゃれたヘリンボーン調のクッションフロアに張り替えました。

壁紙と天井のクロスも張り替え、和室の畳はフローリングに。押し入れは襖を外し、洋服掛けのバーを造り付けてクローゼットにしました。結局、購入申し込みから、売買契約、室内リフォームのプラン立案、見積もり、施工・完成まで、半年近くかかりました。

でも、購入とリフォームで予算内の数百万円に収まりました。3年前の春、栄子さんはここに引っ越して来ました。まだ荷物は多いものの、購入は大正解、部屋に大満足、とのことです。

駐車場はマンションの目の前で、月1万円。職場までの通勤のほか、ヨガ教室や近場の温泉にも車を運転して行きます。でも、日常的な食品の買い出しも、友だちと食事に行くのも、歩いて行かれます。ふだんは自炊していて、産直の店でホウレンソウやにんじんなど野菜を買っては、週末に作り置きをします。

荷物を減らした分、部屋は30平米とは思えないほど広々としました。何種類もの観葉植物が、室内に葉を広げています。これからは、ぼけないよう、フレイルで寝たきりにならないよう、体力が大事。なので、ヨガのほか、ウオーキングやストレッチなどで、体は鍛え続けるつもりです。

マンションを購入したことで、栄子さんの月々の住居費は、家賃6万円から、管理費と修繕積立金の約2万円+駐車場代1万円の計3万円に下がりました。駐車場は、いずれ車を手放したら不要になります。月に2万円の住居費なら、年金生活になっても払えると試算します。

それでも、「体調次第だけど、年金の受給開始を65歳か70歳からにして、受給額を増やしたい。それまでは、パートで働いて稼ぐつもり」と、栄子さん。

介護職は給料が高くないので、厚生年金もあまり多くありません。社会保険料や住民税などが引かれると、月の手取りの年金は、国民年金と足しても12~13万円程度になりそうだからです。