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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。今まで自分で働いて自分の食い扶持を稼いできた独身女性たちは、定年後の住まいをどう考えているのでしょう。それぞれ個別の事情もあるでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

前回「シングル定年女性、老後の家をどうする?いつまで働けるのか、折り合いの悪い母と住むか、家を探すか…連立方程式のような「老後モラトリアム」」はこちら

介護福祉士の栄子さん(仮名、60)

東京で、正社員として大企業に40年近く勤め上げても、退職金がもらえたとしても、老後は厳しい生活が待っています。女性の給料が低いため、年金も多くないからです。勤務先が中小企業や小規模事業者ならばなおのこと。

地方ならば、もっと給与も低く、その分年金の受け取りも少なくなります。そんな低年金生活を見越して、還暦前に「老後」の準備を始めたのが、東北地方の県庁所在地に住む介護福祉士の栄子さん(仮名、60)です。中古マンションを3年前に買い、VIO脱毛も始めました。

栄子さんが買ったマンションは、県庁所在地のJR駅から徒歩10分ちょっとの場所にあります。新幹線も乗り入れる駅前には、スーパー、飲食店、量販店、ブティックから映画館、コンサートホールまで、何でも揃っています。空港行きリムジンのバス停も自宅から徒歩1分。東京や行楽地には、飛行機でも新幹線でもすぐに出掛けられます。

さらに、内科、整形外科、歯科などクリニックや総合病院、有名な隠れ家レストランやバー、繁華街、銀行、郵便局、産直の農林水産物売り場まで、マンションから徒歩10分圏内にあります。住むのにはとても便利な立地です。少し遠いのは役所くらい。実家も、歩いて10分強で着きます。

「年を取って、車が運転できなくなっても、ここなら暮らせると思ったの」と、栄子さん。

車社会のこの市では、家族全員が一人一台、車を持っているのが普通です。バスなど公共交通機関は本数が少なく、車がないとどこに行くのも不便なためです。でも、栄子さんも、二人きょうだいの兄も独身。老後に面倒を見てくれる親戚はいません。

将来、車を手放した後も、自分のことは自分で始末をつける覚悟です。なので、「老後の終の住処」は、駅にも近く、歩いて全ての用事が済ませられる、このエリアを希望しました。