24年4月より放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。伊藤沙莉さん演じる主人公・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんです。先駆者であり続けた彼女が人生を賭けて成し遂げようとしたこととは?当連載にて東京理科大学・神野潔先生がその生涯を辿ります。先生いわく「教師となった嘉子は、入学してきた女子学生たちの憧れの存在だった」そうで――。
再び明大女子部へ
1940(昭和15)年12月、嘉子は弁護士登録をして(試補時代のままに)第二東京弁護士会に所属し、引き続き仁井田益太郎の事務所で勤務することになりました。
主に離婚訴訟を引き受けて働き出した嘉子でしたが、身近な生活にまで、戦争の足音が迫ってきていました。
それまでも中国との戦争が続いていましたが、1941年12月に太平洋戦争(アジア・太平洋戦争)が始まります。
戦時下では民事訴訟の数自体が大きく減り、嘉子は弁護士としての活動がほぼできない状態になっていきます。
そのような中で、嘉子の生活の中心は、母校明大女子部法科での教育となっていきました。弁護士登録をするよりも前の1940年7月、嘉子は明大女子部法科の助手となっていたのです。
さらに、1944年8月には助教授へと昇進しました(なお、その頃には明大女子部は改組して、明治女子専門学校となっていました)。