岩下志麻さん
「篠田とマンボを踊っていたら、突然思ったんです。〈あ、私この人と結婚する〉って」(撮影:浅井佳代子)
「女優の結婚=引退」が当たり前だった時代、映画監督の篠田正浩さんと結婚し、仕事を続ける道を選んだ岩下志麻さん。夫と二人三脚で映画界を牽引してきた彼女が、結婚生活を通して得たものとは (構成:篠藤ゆり 撮影:浅井佳代子)

映画会社から大反対にあって

篠田と結婚して57年――そんなに経つのですね。びっくりしちゃいます。(笑)

篠田と出会ったのは19歳の時。その後、彼が監督した映画『暗殺』への出演が結婚のきっかけになりました。撮影の打ち上げでナイトクラブに行き篠田とマンボを踊っていたら、突然思ったんです。「あ、私この人と結婚する」って。

それで踊りながら「私、監督さんと結婚しそうな気がします」と言ったら、彼はプイッと席に戻ってしまった。

後から聞いた話ですが、篠田は「清純派の女優だと思っていたのに、あんな不良だとは知らなかった」と怒っていたそうです。(笑)

ただ、当時の私は結婚願望ゼロ。束縛されるのが嫌いでね。篠田のことは尊敬していて、撮影中に何度か食事に行ったものの、恋愛感情はありませんでした。ですから、まさに直感としか言いようがないのです。