森永卓郎
(写真提供:講談社)
農林水産省の発表によると、2022年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は38%だったそう。そのようななか、「いざ食料危機が起きたとき、大都市の住民は真っ先に飢えることになる」と訴えるのは、経済アナリストの森永卓郎さん。そこで今回は、東京大学特任教授・鈴木宣弘先生と森永さんの著書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』から一部を、お二人の対談形式でお送りします。

「助け合いができない人」は次の時代に詰む

森永 うちは野菜をほとんど買わないのですが、冬場は収穫できないので、自分で作った分では足りないんです。でも、隣の人から交換してもらったり、分けてもらえるのでなんとかやっていけるんです。

隣の人はもう80歳を超えているんですけど、農業マニアのような人で、自然薯も作っているんです。

自然薯って土の中深くまで伸びるから、収穫が難しくて、普通は土の中に雨樋のようなものを斜めに這わせて、自然薯が深くまで伸びないようにする。でも隣の人は、そのやり方は自然の摂理に反すると言って、下へ伸ばすんですよ。

当然、収穫時は160センチほども掘らなきゃいけないので大変(笑)。

ほとんど土木作業なんですけど、それでも自然な方法にこだわっている。そんなやり方でもお互い助け合っているからやっていける。

鈴木 なるほど。まさに「連携」ですね。

森永 私はずっと東京で仕事をしてきたので、これまであまり地域社会と関係をもたずに生きてきた。でも、畑をやるようになって、近所の人たちとも付き合うようになったんです。

「自立」し、人と「連携」しながら、クリエイティブな仕事をする。農業はアートだと言っているんですが、まさに自分の創造性を自由に発揮できる舞台なんですよ。