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創刊以来、《女性の生き方研究》を積み重ねてきた『婦人公論』。この連載では、読者のみなさんへのアンケートを通して、今を生きる女性たちの本音にせまります。今回は、家事に関するアンケート。掃除、洗濯、炊事から名もなき家事まで、日々どのようにこなしているのでしょうか――。

「家事に費やす時間は?」<あなたにとって家事とは?・1>よりつづく

「お止しなさい、人真似みたいな」

1916(大正5)年に創刊した『婦人公論』。当初はオピニオン誌としての側面が強く、「家事」(掃除、洗濯、炊事、買い物など)に関する記事の掲載は、ほとんどありませんでした。

実際、1925(大正14)年6月号の「国家本位の家事経済の話」連載第1回の冒頭で、著者の中沢美代さんにこう指摘されています。

〈婦人公論に家事的方面の記事を加えようと思うから、何か書くように、という註文を最初に受けたのは、未(ま)だ二月末の或る寒い晩でした。

「お止(よ)しなさい、人真似みたいな。お互いに本領がある。そっちの方面は『主婦の友』や『婦人世界』あたりに任せて置いて、あなたの方は従来の主義で大いにおやりなさい。その方が好(い)いじゃありませんか。」と答えた私は、実のところ少しも気乗りがしていませんでした〉

手厳しい! その後も3度編集部から訪問を受け、結局中沢さんは仕事を受けることにしたのでした。

中沢美代(美代子とも。1874-1973年)は、東京家政研究会の主幹を務め、『料理』『簡易洋食の拵方食方』などを上梓した、当時の家政学の第一人者。全5回の連載では、裁縫、洗濯、食物について持論を述べました。

中でも食物については、米不足による米価の高騰などへの対策や料理法の改良の大切さ、食べすぎへの警告など、現代にも通じる分析が光っています。

「国家本位の家事経済の話」第1回が掲載された『婦人公論』1925年6月号