「日本一」になるために導入したメンタルトレーニング
「吉岡さん、日本一を一緒に目指しましょう!」
甲子園での歓喜の瞬間からさかのぼること約2年前。
慶應義塾高等学校(以下、「塾高」と記す)野球部より先に私に声をかけてくれたのは、慶應義塾体育会野球部(慶應義塾大学野球部)の堀井哲也監督でした。
2020年の東京六大学野球秋季リーグ戦。慶應義塾大学(以下、「慶大」と記す)は宿敵・早稲田と直接対決の時を迎えていました。
優勝まで「あと1アウト」というその場面で、痛恨の2ランホームランを浴びてしまい、まさかの逆転負け。手が届きかけていた優勝を早稲田に奪われてしまいます。
優勝まで、本当にあと一歩。
その「あと一歩」を埋めるためにはメンタル面での強化が必要と考えた堀井監督が、人財育成とメンタルサポート事業を行っている私に声をかけてくれたのです。
メンタルトレーニングを取り入れた後のチームの変化について、当時の主将を務めた福井章吾選手はインタビューの中で次のように答えています。
「僕個人としては『ありがとう』というワードを本当によく使うようになったことですかね。ただ、『ありがとう』を口に出すとなると恥ずかしいじゃないですか(笑)でも、プラスの事を思うのと言葉に出すのは大違いだということを脳科学的見地から教えてもらい、凄く納得できたので、意識して使うようにしました。
チームとしては、親指を立てながら『いいね!』と言う、『いいねポーズ』を作り、練習中に良いプレーが出た時には皆で『いいね!』と言い合うようにしたんです。そうしていたら、アップの時やダッシュの時でも『いいね!』を乱発するようになり(笑)、チームの雰囲気がどんどん明るくなっていきました」
(「慶應義塾大学野球部 日本一の陰にSBTあり!〜Giving back(恩返し)の優勝〜」日本能力開発分析協会『JADA通信』126号)