不安や心配ごとを共有できる仲間が近くにいたら、どれだけ心強いか――。ご近所同士で助け合える場を自ら作り、そこに集う人たちはどんな関係を築いているのだろう
励まし合う憩いの場
<石川県輪島市「かあちゃん弁当」>
私の家の隣に、家族と疎遠になっている独り身の高齢男性が住んでいた。その男性が転んで腕を骨折したのを機に、食料や日用品の買い出しを私が引き受けることに。ある日、ベッドの上で苦しむ男性を発見し、救急車を呼んだのも、頼まれていた弁当を届けた私だった。
高齢者の見守りがいかに大切か、また高齢者自身が孤立しないよう誰かと繋がっておくことがどれほど大事か、身に染みた体験だ。
この経験から、独居の高齢者がゆるく繋がれる場所はあるのかと思い立ち、調べてみることにした。
まず見つけたのが、石川県輪島市の「かあちゃん弁当」だ。2019年、ひとり暮らしの高齢者を心配した地元の60~70代の女性4人が始めた事業だという。地域にはスーパーも少なく、移動手段を持たない高齢者は買い物も難しい。
そうした状況をなんとかしようと、4人はお金を出し合い、地元農家の協力を得て食材を確保。週2~3回、栄養バランスのいい宅配弁当を20~30食手作りし、700円で販売してきた。
配達時の玄関先でのたわいない会話を楽しみにしてくれる利用者も多く、高齢者の見守りを兼ねた大切な機会にもなっていたという。