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連載「相撲こそわが人生~スー女の観戦記』でおなじみのライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間務めながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります

遠吠えをする気力がない

私は若い頃から年上の知り合いが多く、その人たちの話から良いことも悪いことも学ぶことが多かった。

50代に入ろうとする頃だった。職種は違うが同じ会社の7歳年上の女性が私に言った。

「『負け犬の遠吠え』(酒井順子著、2003年、講談社刊)という本を読んだわ。私たちみたいのを『負け犬』と言うそうよ」

当時、「負け組」、「勝ち組」という言葉が大流行し、この本の「負け犬」というのは、未婚で子供がいず、30代以上の女性のことで、著者自身もそうなので、反響を呼んでいた。

私は、「書いた人は偉いよ。私は遠吠えをする気力もない」と答えた。

先輩は、「私たちは旦那いず、子供いず、お金のある父親もいない。おまけに真面目に働いても給料が安い。老後は四面楚歌だね」と言った。

現在70歳以上で働いてきた女性の中には、会社にもよるが入社の時に「結婚したら会社を辞めます」と宣言させられたり、30歳近くなると会社にいずらくなり、結婚すると嘘をついて辞める人もいた時代である。

この先輩は、「結婚って縁よ。結婚できる人は山奥に1人で住んでいてもできるのよ。結婚なんてどうでもいいわ」と言い、一人で楽しく生きる道を究める方向に進んだ。

70歳を過ぎると、夫を亡くしたり、頼れる子供がいない人が加わり、孤立した女性が私の周りに増えた。