NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さん
(撮影:婦人公論.jp編集部)
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんによる『婦人公論』の新連載「老いの実況中継」。92歳、徒然なるままに「今」を綴ります。第19回は、【これからも道は続く】です。(構成=篠藤ゆり イラスト=マツモトヨーコ)

後輩たちに思いを託して

今年6月に開かれた「高齢社会をよくする女性の会」の総会で、理事長を退き、名誉理事長となりました。会の設立は1983年ですから、40年以上、理事長を続けてきたことになります。

数年前から、そろそろ後輩に道を譲るべきだと考えていましたが、優秀な方々が継いでくださることになり、肩の荷が下りてほっとしております。

毎年各地で大会をやってきたので、それぞれの土地で活動される方も増えてきました。みんなで蒔いた種が、各地で次々と芽を吹いていく様子をこの目で見ることができたのは、このうえない幸せでした。

私は今、92歳ですが、この歳まで活動を続けることができたのは、先輩方の背中を見てきたからです。私が女性問題に〈覚醒〉したのは、32歳のとき。夫の急死により、4歳の娘を抱えて寡婦になり、当時の主婦や働く女性がどれほど弱い立場にあるかを思い知らされたことがきっかけでした。

女性は一人前の働き手としては見なされず、職業選択の幅は限りなく狭かったため、一家の働き手である夫を失うと困窮する家庭も少なくありませんでした。

私は幸い仕事を持っていましたが、シングルマザーとして生きていく不安もありました。だから新聞で「日本婦人問題懇話会」の記事を見たとき飛びついて、イベント会場に足を運んだのです。

同会に参加するようになり、婦人運動の先駆者のお一人であられる山川菊栄さんや、労働省(現・厚生労働省)時代に男女雇用機会均等法制定の中核を担った赤松良子さんをはじめ、多くの先輩方と出会いました。

そしてときには鍛えられ、ときには甘えさせてもらうことで、人生の新しい扉が開いた次第です。