100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第85回は「大人の贅沢な時間の使い方』」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
『時間の使い方』
宝塚を退団した人に、退団して何が変わったかを聞くと、だいたいみんなこう答えるでしょう。
「時間の使い方」だと。
宝塚時代、やることが明確にあったので、それに向かってひたすら進んでいく日々でした。
休日の過ごし方は、身体のメンテナンスと、必要な買い物。
ゆっくりしているつもりでも、常に頭には舞台のことや次やるべきことがありました。
それが当たり前な21年でした。
その忙しい日常がなくなると楽になるかと思いきや、何もしないで時間が過ぎていくことが恐くて、罪を犯しているかのような罪悪感に苛まれました。
忙しくない時間に戸惑い、どうしていいかわからなくなくなりました。
そして忙しい日常がなくなって初めて気づきました。
やることが明確にあった日々の幸せを。
忙しい時は時間が欲しくなり、時間ができると忙しくしたいと思う。
人はつくづく勝手なものです。
慣れない時間の中で私は溺れ足掻いていました。