主人公の吉高由里子さんが演じる「紫式部/まひろ」の若い頃からの朋友であり、またライバルとして強烈な印象を与えるのがファーストサマーウイカさんの「清少納言/ききょう」である。ききょうは、中宮・定子(高畑充希さん)に仕える忠実な女房で、定子のために『枕草子』を著した。定子亡き後も、定子の栄華を綴った『枕草子』は一条天皇(塩野瑛久さん)の心をとらえて離さず、のちに入内した藤原道長の娘で、まひろが仕える中宮・彰子(見上愛さん)のもとになかなか足が向かない。
しかし、まひろが書いた『源氏物語』がきっかけで、一条天皇は彰子とまひろがいる藤壺を訪れるようになり、やがて彰子を寵愛するようになった。 ウイカさんの迫真の演技は、中宮・定子×中宮・彰子、清少納言×紫式部、『枕草子』×『源氏の物語』という対立を浮き彫りにし、ドラマを際立たせている。 大河ドラマに初出演して全収録を終えたばかりのウイカさんに、振り返ってもらった。(取材・文◎しろぼしマーサ 写真提供◎NHK)
あっという間の楽しい1年
━━大河ドラマに初挑戦して、さきほどクランクアップなさいましたが、振り返っていかがでしたか。
大河ドラマ以外では得難い経験ばかりで、緊張感と同じだけワクワクも詰まった、あっという間の楽しい1年でした。
私は今回の役をいただいてから、他の仕事をしている時も休みの時もききょうのことを忘れないように、普段から髪型を平安を感じられるスタイルにしたりして常に自分に大河ドラマを課そうとしていました。それじゃないとやれないと思って。
━━ききょうの人生を生きてみて、どんな女性だったと思いますか。
清少納言はあけすけで、ウィットに富んだ才気煥発な女性であるのは「枕草子」からも感じられますが、「光る君へ」のききょうは、より勝ち気で真っ直ぐなパワフルさを感じました。大石さんの描くききょうは、赤の他人とは思えず非常に親近感をもちました。仕えていた中宮・定子様が崩御されても、生きていらした頃と同じように定子様を思い続けている。その忠誠心と深い愛に心打たれました。
ききょうにとって定子様こそが「光る君」。あれだけ大きな光を失えば、同じだけ深い暗闇に包まれます。「闇堕ち」と言われていましたが、個人的には堕ちたというより、何も見えなくなった闇の中で、光を探し続けている必死さ、悲しみを強く感じていました。
そして、定子様へのゆるがぬ信念や使命感ゆえに、闇の中でもがき苦しみ、悲しみが恨みになりどんどんと増長して、あのようになってしまった。
ききょうと向き合う中で、もし私自身が同じように大切な人や光のような存在や物を失ったら、その後どう生きるのだろうか?と自問自答しました。
誰もが自分にとっての「光る君」がいて、それを失ってからどう生きるか?それがききょうという人物を通じて、視聴者さんの心に残るといいなと思いました。