日本にいる時間が増えた結果”国内”カルチャーショックに陥ったというマリさん。たとえば、かつての日本と言えばイタリアと真逆の<時間に正確な国>というイメージでしたが、実際には――。(文・写真=ヤマザキマリ)
縦軸カルチャーショック
コロナ禍以降、日本にいる時間が増えた私は、ちょっとした“国内”カルチャーショックに陥っている。空間を横軸で見て比較したカルチャーショックではなく、今と昔の日本を比べての、縦軸的違和感とでもいうべきか。
時間にルーズな国と聞いて皆が思い浮かべてしまうのがイタリアだが、乗り物の出発・到着の時刻は、まさにそれを象徴するものだった。
私が暮らしていた頃のイタリアのバス停には、そもそも時刻表がなかった。だから、自分が乗りたいバスがいつ来るのかは勘を働かせるしかない。
今でこそ電光掲示板に到着までの残り時間が表示されるようになったが、それも場合によっては適当だったり壊れていたりする。
列車においては、数十分どころか数時間の遅れは当たり前。国境をまたぐ国際列車ともなれば、遅延時間がダイナミックに10時間を超えることもある。
ハイテクな高速列車が行き交うようになった今でも、数時間の遅れは健在だ。