イラスト：川原瑞丸
思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。コラムニストかつラジオパーソナリティにして「未婚のプロ」、ジェーン・スーは女の人生をどう切り取るのか？　本日発売の新著『これでもいいのだ』（中央公論新社）から、疲れた心にじんわりしみるエッセイをセレクトします

四十代にちょうどいいパンツ

物心ついたころから、母親の口癖は「お腹を冷やすな」だった。常時ヘソまで隠れるパンツを着用するのは当然のこと、就寝時には綿の腹巻きをしなければならなかったし、冬の外出時には、タイツの上に毛糸のパンツを穿かされていた記憶もある。

徹底した冷え対策の結果、私はお腹の風通しが少しでも良いと、たちまち不安になる大人になってしまった。十代後半のパンツに多感な年頃でも、ヘソ下までしか覆わないビキニタイプは心もとなくて穿けなかったし、ヘソ出しルック（なんという死語臭！）や、ローライズジーンズなんて、もってのほかだった。

とにかく、腹のあたりがスカスカしていると、落ち着かなくてダメ。過度な腹部保護政策は、私の腹を甘えん坊にしただけだった。

どうでも良すぎる情報で申し訳ないが、四十歳を過ぎたいまでも、私はヘソまでしっかり隠れるタイプのパンツを愛用している。初冬から春までは、毛糸のパンツと腹巻きが合体したような、俗称「腹巻きパンツ」もセットで穿く。

『これでもいいのだ』（ジェーン・スー：著／中央公論新社）

中年なんだからガードルでもつけなさいよと言われそうだけれど、体を締め付けるものはひどく苦手なので無理。スカスカも嫌だし、キツキツも苦手。我ながら、なかなかのわがままボディだ。

去年までは某大手通販サイトの、明らかに若者向けと思われるパステルカラーのボーダー腹巻きパンツを穿いていた。外からは見えないんだから、なんでもいいのだ。けれど、春先には少し暑い。

どうせ、四月半ばまでは穿くだろう。そう思い、薄手のものを新調することにした。腹巻きパンツファンは私以外にも多いらしく、ネットショップの画像を見る限り、年々種類が増えているように思う。