※3月3日に「和田誠さんを囲む会」が予定されていましたが、新型コロナウィルスの広がりを考慮し、延期になりました
あんないい人はいなかった
清水 レミさん、「未亡人」になって、なにかわかったことはある?
平野 ふたりともいろいろ心配してくれてありがとね。和田さんが亡くなってわかったのは、あんまり完璧な夫と結婚しないほうがいいってことかな。だってさ、イヤなところないと諦められないもん。
清水 イヤなところ、なかったんだ。
平野 なかった。いい人だったねぇ、あの人。本当にいい人だった。
阿川 この流れで言うのもナンですけど、日本って、死んじゃうとやたらいい人になる傾向あるよね。
清水 確かに、しばらくは悪口言えない。でもね、うちの両親なんて喧嘩ばかりしてたはずなのに、父が亡くなった途端、母が「あんないい人はいなかった」って何度も言ってんの。
阿川 お父さま、亡くなってどれくらい経つの?
清水 もう10年くらいになるかな。でも母はまだブルーな感じ。
阿川 夫に先立たれた妻の場合、3ヵ月も経てば元気になるってよく言うじゃない。
清水 いや、ずっと元気ないまま。私や弟からすれば、「あんなこともこんなこともあったじゃない」って思うのに、なにか言うと「あれだけ頑張った人にそんなこと言うもんじゃない……」って。すっかり変わっちゃったの。自分まで半分死んじゃったような感じなのかもしれない。
平野 そうなんだ。
阿川 私の父は、それこそお膳ひっくり返すような暴君だったでしょ。母はいつもひどい目にあっていたから、子どもたちはいつ離婚してもいいと思ってた。母の耳が遠くなったのだって、父にぴしゃって叩かれたからじゃないかしらって。
でも老人病院に入院してからの父は、なにかと「母さん、母さん」で、しまいには「母さんも入院すればいいじゃないか」と言い出した。
清水 娘がいても、もうひとつ物足りないものなんだね。