101歳の長寿を全うした生活評論家、吉沢久子さんが綴った、毎日の小さな喜びを大切に、前向きに悔いの残らない時間を過ごす生き方。エッセイ集『101歳。ひとり暮らしの心得』(中央公論新社)から幸せな暮らし方の秘訣を紹介します。

<生きていることが楽しくなる秘訣>

何かを手放すときは気持ちを切り替えて潔く

私は、50代に入ってから、たとえば人前で鰺の頭をスパッと落とそうとして一気に切れなかったり、ときどき固いものが切りにくいなと感じたりするようになりました。若い頃より筋力が落ち、包丁さばきが鈍くなってきたのです。

そこで50代半ば頃、もうこれからは人前で仕事として料理を披露するのはやめようと決めました。自分が理想とする仕事のやり方ができないなら、スパッとやめよう。その代わり、違う仕事のやり方を探せばいいと、パッと切り替えたのです。

 

(写真:stock.adobe.com)

 

力がなくなったら、生のカボチャはうまく切れません。だったら、ちょっと電子レンジにかけてからカボチャを切ればいい。そんなふうに、どう暮らしを便利にしていくかということに興味が移っていきました。

できないことや、衰えてきたことにしがみつくよりは、今の自分にできることを探す。そういう習慣を身につけておいたおかげで、歳を重ねて日々衰えを実感するようになっても、鬱々とすることなく笑って生きていられるのだと思います。

 

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