(写真提供:Photo AC)
英語を話せるようになりたい、ビジネスの場面で自分の考えを英語で伝えたい…。「使うため」の英語を身に付けるには、どのような学習法が良いのでしょうか。社会言語学者の瀧野みゆきさんは、英語を「世界の共通語」として捉え直す「ELF(English as a Lingua Franca =エルフ)」という考え方を取り入れた学習法を提案しています。そこで今回は、瀧野さんの著書『使うための英語―ELF(世界の共通語)として学ぶ』から、新しい視点の英語の学び方を一部ご紹介します。

英語のリーディング力

私たちが日常的に「読む」対象は、日本語でもデジタルの情報が多くなっているが、英語ではその傾向はさらに強い。英語の文章の多くは日本の外で作成されるから、紙に印刷して届けるコストや時差を考えれば、デジタルの読書が主流になるのは自然だろう。

私自身も、授業で使う英語教科書をのぞけば、英語を読むのはほぼすべてデジタル機器の画面上である。英語においては、本や雑誌、手紙などの従来の読書メディアは、社会生活では今後さらに稀になるだろう。

このように、日本人の英語のリーディングは、今後ますますコンピュータ上の英語情報に移行すると考えられるので、本記事では、デジタルの英文を読むスキルに焦点をあてる。

英語を読む力を伸ばすためには、リスニングと同じで、精読と多読をバランス良く行う必要がある。精読では短めの文章を丁寧に読み、英語の語彙や表現、文法にも注意を払う。一方、多読では興味に沿って多くの文章を読み、「なかみ」の理解に集中する。

仕事で英語を使うELFユーザーは、仕事上必要なメールや書類は精読するので、1ページ程度の英語を読む機会は多い。しかし、一部の職種を除き、長文の英語を頻繁に読む人は、意外と少ない。

そこで本記事では英語の多読について、ELFユーザーが継続して取り組みやすい方法を考える。ちなみに、興味のある英文を多読すれば、その中から重要な部分を選んで精読することができる。つまり、多読をすれば、精読の機会も増えるのである。