
(イラスト:堀川直子)
総務省の発表によると、児童養護施設や里親等の下で養育される児童は令和3年度末において約4.2万人。こども家庭庁は里親やファミリーホームといった家庭と同様の環境下での児童の養育を推進していますが、里親等委託率は約2割の状況です。置かれた境遇は厳しくとも、あることをきっかけに人生が輝きだすことも。山川宏美さん(仮名・大阪府・非常勤講師・55歳)は、2歳の頃両親が離婚。児童養護施設に預けられることになりましたが――。
父はお金が絡むと見境がなくなって
私が2歳の時、両親が離婚。母との二人暮らしが始まるも、生活は不安定でした。母は常にイライラしていて、些細なことで怒り、私は怯えて過ごしていた記憶があります。
父とは月に1度面会していました。でも私に会うというのはただの名目で、母にお金を無心するのが本当の目的だったようです。父は金銭トラブルを抱えており、お金が絡むと見境がなくなる人だったと、母が言っていました。
断片的ではあるものの、幼い頃の記憶は私のなかに強く残っており、その後も大きな声や威圧的な態度をとられると萎縮したり、動悸がしたりするなど深い傷を残したのです。
離婚して1年も経たずに、母は私を児童養護施設に預けました。大きくて広い建物が怖く、また集団生活に馴染めない私は、不安に押しつぶされそうになりながら寂しく過ごしていたことを覚えています。