自由になって、視野が広がる60代(写真提供:Photo AC)

現代の60、70代は、まだまだ若い一方、「老い」をどう受け入れていくかについて、考え始める世代でもあります。そんな時助けになるのが「知力」です。「インプットした情報はアウトプット」、「できないことには鈍感力を発揮」など日々の習慣が、60代からの自分を作り直してくれます。「身体」と同様に「知力」にも鍛え方や保ち方のコツがあると語る、身体と言葉の専門家・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』より一部を抜粋して紹介します。

60代からの自分を作り直す

作家の林真理子さんは、先輩作家の田辺聖子さんから、こんなことを教わったそうです。

「女は60歳からよ。60を過ぎてから、すごく自由になってくる。体力は落ちるけど、『こんな可能性もある』『こんな考え方もある』と、視野が広がるから生きやすくなるのよ」(林真理子著『成熟スイッチ』講談社現代新書)

この言葉を聞いた林さんは、「還暦を迎えた時もどんなに心強かったことでしょう」と書いています。田辺さんの言葉は、女性に限らない教えです。

自由になって、視野が広がるのです。若い頃からの思考や脳の癖にとらわれている場合ではありません。これまでになかった世界が待っているのですから、ワクワクしかありません。

それでなくとも寿命が延び、構造変化の勢いが激しい時代、心の構えも新たに組み替える必要がありますが、特に意識的に組み替える時期が、還暦、すなわち60歳なのです。

お子さんがいたとしても独立する頃合いでしょう。この時点で今後の自分を作ることは、まったく新しい家を建てる感覚ではなく、ひと通りの社会経験と下地がある年齢ですから、リフォームに近い感覚です。

10、20代が自己形成の時期と考えれば、50、60代はルネッサンス、リボーンの時期です。

十干と十二支が組み合わさった干支が一めぐりし、赤ん坊に戻るため赤いちゃんちゃんこを着る、還暦はまさに、二めぐり目の人生、生まれ変わる時期なのです。

1回まっさらになる、更地感覚を持つ。今まで背負っていた責任や競争意識をいったん手放してみましょう。

ルネッサンスとは、キリスト教の影響が大きかった14世紀末から16世紀初めにかけて、ヨーロッパで起きた文芸復興運動です。古代ギリシャ、ローマ時代の生命を謳歌(おうか)する視点を取り戻そうと文化が花開きました。

ルネッサンスという言葉は、60代という復興期にふさわしく、新しい風を吹かせる時なのです。