「人生100年時代」といわれるなか、老後のお金が心配な方も多いのではないでしょうか。40万人以上の資産運用に関わってきたお金のプロ、ウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんは、「何歳までお金が必要になるのかは誰にもわからないからこそ、資産運用を続けて、お金の心配を減らすことが重要」と話します。そこで今回は、柴山さんの著書『新しいNISA投資の思考法 お金の悩みから解放される 正しい「長期・積立・分散」のはじめ方』より一部を抜粋してお届けします。
「終身雇用は維持できない」発言の衝撃
「老後2000万円問題」報告書の炎上には、伏線がありました。
報告書が発表される2カ月前の2019年4月、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長(当時)が首相官邸で、「終身雇用はもう維持できない」と発言し、世の中に衝撃を与えました。さらに翌月には、トヨタ自動車の豊田章男社長(当時)が、「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言し、大きな話題を呼びました。
経団連は、大企業を中心とする経済団体として、長年の間、終身雇用を支えてきた中核的存在です。また、トヨタ自動車は日本を代表する企業であり、経団連の会員企業の中でも特に、雇用を守ることにこだわってきた経緯があります。このため、経団連会長とトヨタ社長の発言は衝撃をもって受け止められ、大きく報道されました。
しかし、経団連会長やトヨタ社長(いずれも当時)の発言を待つまでもなく、終身雇用の制度はすでに過去のものとなっています。「老後2000万円問題」報告書を当然のことと受け止め、むしろ、「そんなことは昔からわかっていた」という意見があったのはこのためです。