腎臓の機能が低下した患者を生かすための治療、人工透析。堀川惠子さんは、「血液透析」を受け病と闘う夫に寄り添い続けました。しかし病状の悪化により命綱であるはずの透析は耐えがたい苦痛を伴うようになり、夫は透析中止を決断。苦しみながら他界しました。それから7年、透析医療のあるべき姿を求めて取材を重ねた堀川さんの著書『透析を止めた日』が、話題を呼んでいます。取材で出会った森建文さんは「腹膜透析」を推進する医師。その治療法のメリットとは。(構成:菊池亜希子)
どうすればこんな思いをさせずにすんだのだろう
堀川 仙台で往診に同行させていただいて以来ですね。その節はありがとうございました。
森 ご著書、すごい反響ですね。堀川さんの本を読んで来られる患者さんが増えました。「本に書かれていた通り、先生は白衣じゃなくてパーカーなんですね」とよく言われます。(笑)
堀川 あの日は高齢者施設で腹膜透析患者さんの往診でしたよね、パーカー姿で(笑)。お一人ずつ部屋を訪ねて、腹部エコー検査をしたり、お腹のカテーテルや透析液のバッグの状態を確認したり。皆さんリラックスして、悩みや不満を先生にこぼされたりして。その様子は、私が見てきた夫の血液透析とはまったく違っていました。
森 透析には血液透析と腹膜透析という2つの方法があることは、一般的にはあまり知られていません。とくに血液透析の設備が充実している都市部では、その傾向が強いかもしれないですね。
《腎臓の機能が低下すると》
血液から老廃物や余分な水分を漉し出し、尿にして体の外に排出するのが腎臓の役割です。その機能が正常の約30%未満まで低下すると、むくみや疲労感、息切れなどの症状が表れます。腎機能が正常の10%以下になると末期腎不全と呼ばれる状態に。治療せず機能低下が進行すれば、溜まった老廃物や毒素が皮膚や神経、循環器、消化器などに悪影響を及ぼす「尿毒症」という症状を起こし、命にかかわります。
血液から老廃物や余分な水分を漉し出し、尿にして体の外に排出するのが腎臓の役割です。その機能が正常の約30%未満まで低下すると、むくみや疲労感、息切れなどの症状が表れます。腎機能が正常の10%以下になると末期腎不全と呼ばれる状態に。治療せず機能低下が進行すれば、溜まった老廃物や毒素が皮膚や神経、循環器、消化器などに悪影響を及ぼす「尿毒症」という症状を起こし、命にかかわります。
⇒《腎不全になると》
腎臓専門医による定期的な診察を受けつつ、人工透析か腎移植が必要となります。全国に人工透析患者がおよそ34万人いるのに対し、腎移植実施例は年間およそ1700人(2021年)ときわめて少数。人工透析治療には「血液透析」と「腹膜透析」の2つがあり、血液透析が約97%を占めます。
腎臓専門医による定期的な診察を受けつつ、人工透析か腎移植が必要となります。全国に人工透析患者がおよそ34万人いるのに対し、腎移植実施例は年間およそ1700人(2021年)ときわめて少数。人工透析治療には「血液透析」と「腹膜透析」の2つがあり、血液透析が約97%を占めます。
【参考】日本腎臓学会・日本透析医学会・日本移植学会・日本臨床腎移植学会・日本腹膜透析医学会「腎不全 治療選択とその実際」
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/2024allpage.pdf
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/2024allpage.pdf