25年春のNHK連続テレビ小説『あんぱん』のモデルであり、子どもたちに愛され続けているキャラクター「アンパンマン」の生みの親である、やなせたかしさん(1919~2013年)。新聞記者、宣伝部デザイナー、編集者、放送作家、舞台美術、作詞家など多分野で活躍し、1973年に代表作である『あんぱんまん』の絵本を出版。苦しい時もユーモアと好奇心を忘れなかった著者が生前、前向きに生きる秘訣を語った著書『何のために生まれてきたの?』(PHP文庫)より一部を抜粋して紹介します。
少年時代
――僕は、おとなしい子どもだったんですよ。前列に出たがる子と、後列にいたい子がいますね。僕は後列にいたい、目立ちたくないという性質で、僕のむかしを知る人には、「すごくはにかみ屋だったのに変わったね」と言われます。
弟がいて、弟はとても明るい性格だったんですけど、僕はちょっと暗めだった。容貌に対する劣等感とか、いろいろなものがあって、あまり人前に出たくないという気持ちが強かったんです。どちらかというと、一人で遊んでいるタイプ。絵を描いたりして遊んでいることのほうが多かったですね。
でも田舎で育ったのでやっぱり、その辺の野っ原を飛び歩いたり、木に登ったり、川で泳いだりはしましたけど。つらいこともあったけど、絵を描いている時はうれしくてね、絵を描いていることで救われたというかな、……そういうことじゃないのかな。