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絵本「あんぱんまん」が生まれた日

そうやっていろいろな仕事をしながら五十歳を過ぎ、いよいよアンパンマンが誕生することになります。

と言っても、アンパンマンはある日突然生まれたのではありません。

アンパンマンが最初に世に出たのは、まだ40歳の頃にラジオドラマのコントとして登場させた時でした。ラジオやテレビの仕事をたくさんやっていた時です。とにかくなんでもたたきこんでいた。この時に一回だけアンパンマンを登場させたのですが、どういう具合のものだったか、ぼくもほとんど覚えていません。

2回目に登場したのは「やなせメルヘン」の一編として大人向けに書いたもの。

このアンパンマンは、自分の顔を食べさせるのではなくて、あんパンを配るおじさんだったんです。自分でパンを焼いているから、マントには焼けこげがある。太っているし、顔もあんまりハンサムじゃありません。非常に格好の悪い正義の味方を書こうと思ったのです。正義の味方は自分の生活を守ってくれる人ではないかと思っていた。子どもから見れば、おなかをすかして泣いている時に助けてくれる、地味な正義の味方を書きたかったんです。