お金の話をするのは下品だという教え
鈴木 原田さんの新刊『月収』を読ませていただきました。収入が月4万円から300万円までの6人の女性たちのリアルな暮らしぶり。お金を切り口にすると、その人が人生で何を大切にしているのか見えてくるのですね。
原田 そうですね。キーワードを「月収」としたことで、いろいろな人を描くことができたように思います。2024年の1年間、『婦人公論』で連載していたものをまとめた一冊ですが、その間に円安が急激に進みましたね。
お米も2キロ1000円くらいだったのが今や1700~1800円に。私自身の気持ちも変化し、当初、節約の話のつもりだった物語が、お金を軸にそれぞれの主人公が人生をどう進めるかという話へと変わっていきました。
鈴木 お金とどうかかわるかは、生き方や人生にもつながります。とても大切なことなのに、私たちは、「お金に重きをおくべきではない。それは下品なこと」と教えられて育ってきたように思えてなりません。
私が芸能界で仕事を始めたときも、「お金のために仕事をしてはいけない」と言われました。芸だ、文化だ、お金儲けとは違うんだ、みたいな。そのため私は、お金とどう向き合い対峙していくべきか、実は生きるために欠かせないことを直視せずにきてしまったような気がします。
原田 私も父から、「一生懸命やっていれば、金は後からついてくる」と言われ続けていました。つべこべ言わずがんばれ、と。なので、父が『月収』を読んだら、うちの娘はこういうことを書くのか、ときっとビックリすると思います。
鈴木 実は私、数字が苦手なんですが、生きていくためには、苦手だからといってお金の問題を避けて通るわけにはいきません。そういう意味でも、この本に出てくる女性たちの生き方はとても参考になりました。