聚洸 引千切

上巳の節句のころ、
菓子舗の店先にお目見えする御所風の愛らしい菓子。
引っ切った餅のかたちから
「ひっちぎり」「ひちぎり」と呼ばれ、親しまれる

京菓子には節句行事にちなむものがたくさんありますが、三月三日の上巳(じょうし)の節句の菓子として知られるのが「引千切」です。子どもの成長を祈る宮中儀式に用いる「戴餅(いただきもち)」の流れを汲む菓子で、小餅をちぎった様子が、この菓子のデザインに伝わります。

桃色や薄緑色の土台に小豆餡やきんとんを載せたものが多くみられますが、春の菓子らしい華やぎをたたえながら、素朴な祈りのかたちを残している美しい菓子です。

聚洸の引千切は二種類。薄桃色の練り切りの上にこし餡と薯蕷(じょうよ)餡のきんとんを載せたものと、よもぎ入りの緑色の練り切りにつぶ餡と薯蕷餡のきんとんを載せたものがあります。

愛らしくちょっぴり不思議なかたちは、まるで人格を備えているよう。いただくのがもったいない気持ちになって、飽きずに見とれてしまいそうです。