(写真提供:Photo AC)
「自分のことが好きになれない」「自分なんてダメな人間だ」といった悩みを抱えていませんか。精神科医の泉谷閑示先生は、こうした自己否定の感情について「原因は幼少期の育ち方にある」と指摘しています。今回は、泉谷先生が心のもやもやを解消するためのヒントをまとめた著書『「自分が嫌い」という病』より一部引用、再編集してお届けします。

「ほぼ神」としての親

言うまでもなく、人は子どもができれば自動的に親になるわけで、特にそのための試験や資格があるわけではありません。厳しい見方かもしれませんが、実際のところ人が親になるような年齢ではまだまだ人生経験も浅く、親という役割を果たす上ではその成熟度はかなり危なっかしいものだと言えます。

ところが生まれてきた子どもは、そんな実態や裏事情など知るよしもなく、無邪気に親に対して全幅の信頼をおいています。つまり人格形成期の前半において、子どもにとっての親は、ほぼ神のごとき存在なのです。

もちろん10年以上経った思春期あたりから親への批判的視点が芽生え始め、それまで鵜呑みにして受け取ってきたことを疑えるようになりますが、その時点ではもう既に、子どもの人格の基礎部分には、しっかりと親の足跡が残されてしまっているわけです。

ところが実際の親は、もちろん神ではなく不完全な人間に過ぎないのですから、子どもに対してどんな時でも問題なく接することができるわけではありません。しばしば親は余裕がなくなって苛立ちを子どもにぶつけてしまったり、煩わしく思って邪険に扱ってしまったりなど、およそ完璧な子育てなどには程遠いのがその実情であろうと思われます。