(写真提供:Photo AC)
<本音が正義><論破が最上>との雰囲気が醸成されつつあるインターネット社会。一方、そういった状況だからこそ、相手を直接傷つけたり、関係性を破壊しないコミュニケーション方法を模索するべき、と提案してきたのが脳科学者・中野信子先生です。時代の流れもあって、先生の主張をまとめた『エレガントな毒の吐き方』が、刊行から2年を経た今も2万部増刷するなど好評を博しているそう。そこで今回、刊行時に同書の一部を引用した記事をあらためて配信いたします。

脳は調和よりも論破を好むようにできている

相手と良好な関係を長続きさせるよりも、論破したり、打ち負かしたりすることに喜びを感じがちな人間の脳の性質をどう制御するかは大きな課題です。

人間の性質というよりは、ある程度の社会性を持つ生物全般の性質といえます。

この性質は言い換えれば、ヒエラルキーのある構造を持った集団をつくる生物の性質かもしれません。

たとえば犬はその代表格になるでしょうし、集団の中につつき順位があるニワトリもそうです。もちろん霊長類もそうです。

そういった構造を持つ集団の中にあって、ボスになりたい、ほかの個体よりも上の位置に立ちたいという欲求が生じるのは、生き物にとっては自然なことでしょう。

ヒエラルキーで上位にあるほうがいい扱いを受け、取り分も多くなり、より遺伝子を多く残せる確率が高くなるからです。

多くの個体がそっちを目指すというのは分からない話ではないでしょう。