いつまでも自分の口で美味しいご飯を食べたい。それは誰もが望むことでしょう。そのためには、口とのどの筋肉を鍛えることが近道です(構成=島田ゆかり イラスト=まえじまふみえ)
歯が20本あるだけでは不十分
1989年に厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会が推進した「8020(ハチマルニイマル)運動」をご存じでしょうか。
当時、女性の平均寿命が80歳を超え、およそ82歳になったことから、80歳で20本の歯を維持しようという啓発活動で、実現できれば一生食べることに困らないと考えられていたのです。その成果もあり、2017年には80歳以上で20本以上の歯を残している人が半数を超えました。
しかしさらに寿命が延びた現在は、摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能低下による「誤嚥性肺炎」が増加傾向に。30年にはそれによる死亡者が13万人に達するというデータもあります(東京都健康安全研究センター)。
つまり、超高齢社会の今は、歯を残し、さらに口の機能を維持することが重要ということ。実際、これらの問題をふまえ、18年には口の中のさまざまな機能が低下する症状に対し「口腔機能低下症」という病名が付けられました。
診断は、唾液量の減少や口腔内の細菌増加、咀嚼力、嚥下力の低下、舌や口まわりの筋力の低下など、いくつかの項目で行われます。新しい病名のため、まだ診断できる歯科医は多くはありませんが、自分の口の状態が気になる人は、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう。
