1996年、曽野さんと三浦さん(写真提供:三浦さん/撮影:山崎陽一)
『誰のために愛するか』など数々のベストセラーを生み出したほか、国際的な福祉活動でも多くの功績を残した作家の曽野綾子さんが、今年2月に逝去されました。長男・三浦太郎さんの妻、暁子さんが、曽野さんとの最期の日々を語ります。(構成:篠藤ゆり 撮影:洞澤佐智子)

「わたくしはもう、手術はしません」

曽野綾子は2025年2月28日、老衰のため93歳で亡くなりました。「葬儀は朱門の時と同じようにしてね。どなたにも知らせないように。気づいたら死んでいた、というふうにして」。

生前からそう言われていたので、2017年に義父の三浦朱門が亡くなった時と同じく、家族とスタッフだけでカトリック式の家族葬を執り行いました。

義母からは、聖句が書かれたカードがあるので、参列者に配ってほしいと言われていたのですが、葬儀が終わり、美しい絵が描かれたカードが何百枚も入っている箱が見つかりました。

死去を公表した後で、お参りに来てくださった方もいらっしゃるので、その方々にカードと最新の著書をお送りするのが、義母のためにできる最後の仕事かなと思っています。

義母が人前に出なくなったのは4年半ほど前、自宅で転んで大腿骨頸部を骨折したことがきっかけです。

今まで4回骨折をしていますが、3回目までは仕事も休みませんでした。復調すると海外にも出かけていました。ところが20年10月の骨折以降、自分の足で歩くことができなくなってしまったのです。

●曽野綾子(その・あやこ)
1931年東京生まれ。54年、「遠来の客たち」でデビュー。主な著作に『神の汚れた手』『老いの才覚』など。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。93年、日本芸術院賞・恩賜賞受賞。95年12月から2005年6月まで日本財団会長を務めた