骨折したという連絡を受け、私は住まいのある神戸から東京の入院先へ駆けつけました。面会すると「わたくしはもう、手術はしません。若い方のために、この病室を空けなければ」と言います。
そんなわけにはいかないので予定通り手術を行いましたが、コロナ禍で家族と満足に面会できないこともこたえたのか、食事をとらずどんどん痩せていきました。
そして、「暁子さん、家に帰りたいの。なんとかしてちょうだい」と、そればかり言います。そこでケアマネジャーと相談して自宅介護の態勢を整え、義母を退院させたのです。
自宅に戻ると、入院中の《拒食》が嘘のように食欲を取り戻しました。本来、健啖家で食べることが大好きだった義母です。長年一緒に暮らし料理をしてくれていた女性と相談して、食べたいものを出そうと方針を決めました。
義母は「レバーが食べたい。朝昼晩、レバーでもいい」などと言っていたのですよ。