親子関係を良好に保ちつつ、いつまでも自分らしい暮らしを実現するには、どんな工夫が必要なのか。90代で独居を続ける3人に話を聞くと、そのヒントが見えてきた(撮影:本社・武田裕介)
親子の連絡は最低限。気兼ねなく自由を謳歌
「ごめんなさい。今日は写真撮影があると聞いていたのに、目が腫れぼったくて」と、花模様の杖を軽く突きながら一人さっそうと現れたのは、元祖・事件リポーターの東海林のり子さん(90歳)。取材場所は東海林さん行きつけのカジュアルレストランだ。
顔なじみの店員さんたちと笑顔で挨拶を交わして席に着くと、白いクッションが運ばれてくる。小柄な東海林さんの座高を調整するためのものだ。
「このお店には時々、一人で食事をしに来るんです。今は一人暮らしなので、自分の分だけ作るのは面倒なの。家では、ご飯はパックの白米、おかずもレンジでチンの簡単なもので済ますことが多いので、ここに来た時に新鮮なお野菜やお肉で栄養補給しています」
ところでなぜ今日は目が腫れているかというと、家を出る前に泣いたからだという。
「実は今朝、LINE友だちの若い男性とやり取りしていてね。彼が亡くなったワンちゃんの夢を見て、眠れなくなったというんです。私も愛猫を亡くした経験があるから、気持ちがわかって泣けちゃった。
でも自由に泣けるって贅沢よね。子どもと一緒に住んでいたら、そんなことできないでしょう。完全に一人ということは、ありのままでいられるということなんです」