令和の若者<Z世代>について、「会社をすぐ辞める」「タイパ重視」といったイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは「実は、メディア発信による既存イメージの多くが、彼らの実像を見えにくくし、『昭和・令和世代』との大きなギャップを生んでいる可能性が、指摘され始めている」と話します。そこで今回は、牛窪さんがZ世代のナゾに迫った著書『Z世代の頭の中』から一部を抜粋してお届けします。
「3年で3割の若者が辞める」は本当か
Z世代に対する代表的な説は、「3年で3割の若者が辞める」ではないでしょうか。
この数字自体は誤りではありません。24年、厚生労働省が発表した大卒社会人の離職率を見ても、21年入社の若者がその後「3年以内」に離職した割合は約35%(34.9%)。05年春の新卒(35.9%)以来、16年ぶりの高い水準を示しました(24年 時事通信[10月25日掲載])。正確に言えば、3割どころか35%、3人に1人以上ですから、まさに企業にとって深刻な状況なのは確かです。
一方で、世間的には「ゆとり世代やZ世代は、堪え性がない」や「すぐ辞める」などと言われますが、3年以内に離職する「3割(30%前後)」の数字は、実は00年ごろから25年間で、大きく変わったわけではないのです。
それどころか、労働政策研究・研修機構の研究員(04年当時)の小杉礼子氏の講演録によれば、似た概念の言葉である「七五三現象(中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が、3年以内で離職する現象)」がささやかれ始めたのは、さらに以前の「90年代半ばごろではないか」とのこと(04年 経済広報センター「ネットワーク通信(初夏号)〜若者の就労問題の現状と背景」)。
だとすると、なぜ近年「すぐ辞める若者たち」が問題視されるようになったのでしょう。