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今現在、医療の世界では、画像診断や創薬などで当たり前のようにAI技術が導入されています。その一方「今後この流れは加速し、診療や介護はもちろん看取りの場面まで、AIは欠かせない存在となる」と話すのが、東京科学大学特任教授の奥真也さんです。その先で医師の役割はどう変わり、日本の医療問題は解決に導かれるのでしょうか。今回その著書『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』から一部を紹介いたします。

介護から看取りへ――10年後のAIとDX

「看取り」という言葉を聞くと、終末期の患者さんを家族や医療者が手厚くケアし、最期まで寄り添う姿を思い浮かべるでしょう。しかし、この介護や看取りの領域こそ、人手不足と高齢化の波に最もさらされている現場であり、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が急速に進んでいます。

現在、すでにさまざまなAIやDXの部品が介護の現場に導入され始めています。

たとえば介護ロボットは重労働である身体介助の負担を軽減し、見守りセンサーは高齢者の転倒や異変をリアルタイムで検知して事故を未然に防ぎます。AIは蓄積されたデータから高齢者の行動パターンを分析し、認知症の兆候を早期に発見したり、転倒のリスクを予測したりすることも可能というわけです。

遠隔医療やオンライン診療もまた、過疎地や離島における医療格差を解消する手段として、(医療がもともと目指していた)非接触型診療として普及が進んでいます。

これらは単に効率化を図るという意味だけでなく、介護者の負担を減らし、より多くの人々が適切なケアを受けられる環境を整備するための重要な手段と考えられています。