【stage】関ジャニの丸山隆平が、刹那的な幸福を求める詐欺師を演じる

『COCOON PRODUCTION 2020　パラダイス』

東京で刹那的な幸福を求める詐欺師の物語

市井の人々を泥臭いまでにリアルに描きつつ、人間の機微を繊細に紡いでゆく戯曲の数々で、岸田國士戯曲賞を受賞するなど高い評価を得ている劇作家・演出家の赤堀雅秋。シアターコクーン5回目の登場となる本作では、社会の底辺でうごめく詐欺グループの男たちが、オリンピックを目前にした東京で、刹那的な幸福を求めて走り続けるさまを描く。主演を務めるのは、約2年ぶりの舞台出演となる丸山隆平。関ジャニ∞のメンバーとして活躍する一方で、俳優業でも映像に舞台にと引っ張りだこの丸山が、赤堀作品に初めて出演するのも見どころだ。

舞台は、オリンピックを控えて表層的には浮かれた空気に包まれている東京だ。高齢者を狙った詐欺グループのリーダー梶（丸山）は、ある日ヤクザの辺見に呼び出され、早急な組織拡大を命じられる。取り締まりが厳しくなるなか、虚無感を抱えつつも腹心の真壁らと手を広げていく梶。情け容赦なくカネを搾り取られる老人たちとその家族を尻目に、一時は隆盛を極めたように見えた梶だったが……。

物語は過激な内容にも思えるが、「陰惨な犯罪ものをやろうという気持ちはありません」という赤堀。それよりも「今の日本に漂っている、諦念とまではいかないけれど（略）明確に言語化できない空気感をどう表現できるか」を目指したいと語る。昨日起きた出来事を、今日そのまま舞台に上げることができるのが、舞台の強み。演劇が“社会と連動する芸術”といわれるゆえんだ。これを書いている3月中旬は、新型コロナウイルスが猛威をふるい、オリンピックは開催延期が決定。赤堀がそれをどう見据え、描ききるのか注目したい。

主演の丸山は、実は9年前の初主演舞台で役者としての才を見出された経緯がある。その後のテレビドラマや映画での活躍ぶりは、実力派俳優にも劣らぬもの。ここまで生々しい役どころは初めてだそうだが、今回もきっと血肉の通った人間像を見せてくれるに違いない。そのほか村上虹郎や八嶋智人、坂井真紀をはじめ、梅沢昌代、西岡德馬まで盤石の布陣。今、このキャストとスタッフだからこそ観られる世界を、見逃す手はないだろう。

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前回公演『獣の柱』（2019年）

日本をうっすらと覆っている“違和感”

近年は『散歩する侵略者』が映画化されるなど、ますます注目を浴びている劇団イキウメ。

主宰・前川知大の作風は、平凡な日常に潜む“目に見えない何か”を、演劇ならではの仕掛けを使って舞台上に現出させるのが特徴だ。今回も公式サイトに「気にしないで進む方が、かしこいにきまっている。だが、そのかしこさの先に何があるのか」とあり、現代の日本をうっすらと覆っているこの“違和感”が、物語を解くカギとなりそうだ。

本作では手練（てだれ）の池谷のぶえが客演として参加。さらに、年に一度行われる出演者募集からの参加俳優を迎えての新作となる。

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『セルゲイ・ポルーニン “SACRÉ”「春の祭典」』by Rankin

“世界一優雅な野獣”が、ついに日本降臨

“世界一優雅な野獣”が、ついに日本降臨！ウクライナ出身のセルゲイ・ポルーニンといえば、2010年に英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに史上最年少の19歳で就任するも、2年後にあっさり退団。

16年には半生を描いたドキュメンタリー映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン世界一優雅な野獣』が公開され、そのカリスマ性でバレエファン以外からも熱狂的な支持を得ている天才ダンサーだ。初の日本単独公演となる本作では、日本人振付家の大石裕香とともに振付も担当。

もとは伝説のダンサー、ニジンスキーと多くの名振付家によって上演されてきた傑作だが、今回はアジア的なテーマや要素が融合されたものになるとか。独自の存在感を放つその姿を、ぜひ見届けてほしい。

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください