〈発売中の『婦人公論』12月号から記事を先出し!〉
熱血サラリーマンから戦国武将まで、多彩な役を演じてきた堺雅人さんが、大人のラブストーリーに取り組んだ。読書好きで穏やかな人柄に隠された、役作りへの情熱を語る(構成:篠藤ゆり 撮影:宮崎貢司)
熱血サラリーマンから戦国武将まで、多彩な役を演じてきた堺雅人さんが、大人のラブストーリーに取り組んだ。読書好きで穏やかな人柄に隠された、役作りへの情熱を語る(構成:篠藤ゆり 撮影:宮崎貢司)
高校の演劇部で楽しさに目覚めて
気づいたら、もう52歳です。人生の半分が過ぎて、折り返し地点ですよね。体力的には、若い頃と比べてとくに変わっていないというか――もともと体力がなくて、夜はすぐに眠くなるたちですから(笑)。
体調管理も特別なことはしていません。動きのある役のときはしぶしぶトレーニングをしますが(笑)、動きのない役の期間中は何もしないので、《それなり》の身体になります。
この仕事についたのは、高校で演劇部に入ったことがきっかけです。僕が通った宮崎県の高校は進学校で勉強が忙しかったので、もう少し自由に過ごす時間がほしいと思い、あまり強豪レベルではない文化系の部活に入ろうとしたんです。
「今日は何をしようか」とぼんやりした時間が過ごせそうだという、ゆるい理由で演劇部に入部。ところが、やってみたらかなり楽しかった。そこからゆっくりエンジンがかかっていって、みんなで作品を選んで作り上げたり、演劇の大会に出たり、どんどん熱中していきました。今思うと、とても贅沢な時間でしたね。
かといって、将来役者になろうとは思っていませんでした。当時は、国公立の大学に行って教員や公務員など人様の役に立てる仕事をしたい、と漠然と思っていた。
でも第1志望に落ちて、記念受験として受けた早稲田大学に行くことになり、そこで、もう少しお芝居を続けようという気持ちになりました。
早稲田大学演劇研究会は、歴史も古く、錚々たる役者が輩出しています。そこに入会した時点で、きっと自分は芝居に専念するためにいつか大学を中退するだろうなと感じました。そして実際、中退するのですが、親には本当に申し訳ないことをしたなと思っています。中退するくらいなら、別に大学に行かなくてもよかったわけですから。