小柳ルミ子さん(写真提供◎プラチナムプロダクション) 志村けんさん(写真提供◎読売新聞社)
3月29日、新型コロナウイルスに感染し入院していた志村けんさんが息を引き取った。享年70。入院からわずか10日後のことでした。1970年代にザ・ドリフターズのメンバーとして『8時だョ!全員集合』などの番組に出演し、一躍スターに。以来、「バカ殿様」「変なおじさん」などのキャラクターで親しまれてきました。遺作となった朝の連続テレビ小説「エール」での演技も話題になっています。
現在発売中の『婦人公論』5月12日号では、志村さんの追悼記事を掲載。志村さんといっしょにお茶の間に笑いを届けてきた由紀さおりさん、小柳ルミ子さん、研ナオコさんが、生前の思い出を語ります。小柳さんにって志村さんは弟のような存在でーー。(構成◎上田恵子)

 楽屋で見せた弱々しい姿

一体なぜこんなことになってしまったのでしょう。今はけんちゃんの映像を目にするたびに涙がこぼれ、関係者の方がどれだけショックを受けているか、考えただけで胸が張り裂けそうになります。この怒りと悲しみをどこにぶつければいいのか、気持ちの整理がつきません。

私が最後にけんちゃんに会ったのは、2019年の1月28日。たまたま同じスタジオに居合わせ、楽屋で30分ほどお喋りをしたのです。正直に言いますが、そのときの彼は決して元気そうには見えませんでした。外では普段どおりにしていたものの、楽屋で二人きりになった途端、ものすごく弱々しい表情になって……。ロレツが回っていないため言葉も聞き取りにくく、思わず「お酒飲み過ぎちゃだめよ? もう若くないんだから、体に気を使って夜遊びもほどほどにね」とお説教してしまったくらいです。年齢は私のほうが下ですが、昔から姉か母のような気持ちで接していましたから。

そのときは、「わかったよ。でも、酒が薬だからなぁ。それに、やることいっぱいあるんだよね」と返すけんちゃんに、「そんなこと言わないで、ちゃんと休むのよ」と言って別れたのですが、まさかそれが最後になってしまうとは、思いもしませんでした。

けんちゃんが無理をしていたのではないかという懸念は、フジテレビの『志村でナイト』の3月31日放送分を見たときにも感じました。あれは3月上旬に撮影したものだと思いますが、鼻声で、喋りや動きにキレがなかった。これは私の想像ですけれども、もしかしたらもうあの頃から体調が悪かったのではないかしら。「いつものけんちゃんじゃない」と私が感じたくらいですから。

けんちゃんは頑張りやさんで、少しくらい体調が悪くても無理して仕事をしてしまう人でした。自分から「ちょっと休ませて」なんてことは絶対に言いません。それにもしかしたら、こういう状況だからこそ世の中に笑いを届けたいという思いもあったのかもしれない……。今さら悔いてもどうにもなりませんが、考えるだに無念でなりません。