世界でもトップクラスの長寿国となった日本。しかし、「より良く生きる、自分らしく最期まで、と言いながら、老い方・死に方を知っている人は多くない」と語るのは、病院の臨床で15年以上働く看護師の高島亜沙美さん。そんな現役看護師の高島さんが教える、老いと死のプロセスと終末期の現実を綴った『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』より、一部を抜粋して紹介します。
緩和ケアとは、なにか。その実態も
WHOの定義では、緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価をおこない対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである、とされています。
技術や施術ではなく、アプローチなのでケア寄りです。一般的なイメージだと疼痛緩和でしょうか。医療用麻薬を使う場面を思い浮かべる人もいるかもしれませんね。
実は、それ以外にも睡眠障害や精神面でのケア、あとはその人の尊厳を守るケアもおこなっています。
事例を出してみましょう。以前、イスラム教の患者さんを担当したことがあるんですが、その人の一番大事な活動はお祈りでした。このお祈りを毎日するために、環境や時間の調整をしたことをよく覚えています。
お祈り中なので、レントゲン撮影はあとにしてくださいと検査室に連絡したこともありました。これもれっきとしたケアなのではないでしょうか。
緩和ケアの役割は、疼痛管理、身体面と精神面での苦痛のケア、その他随伴症状への対応です。関係者への悲嘆と喪失のケアもここに入ります。病気に関連するあらゆる痛み、苦しみ、つらさを緩和するためにある、と思っていただいて構いません。
しかしながら、現代の医療技術をもってしても、すべての症状を緩和でき、穏やかに最期を迎えられる患者さんは限られています。薬を使いすぎたことで思っていたよりも早く亡くなってしまうのは、みなが望んでいることではないと思います。
それくらい、患者さんの状況や病態に合わせて痛みや苦しみを緩和すること、コントロールすることは大変難しいのです。