※本稿は、『天才の考え方 藤井聡太とは何者か?』(加藤一二三・渡辺明/中央公論新社)の一部を、再編集したものです
アナログ世代とAI世代
2020年の4月、私は36歳になる。
2000年4月に中学生棋士として15歳でプロデビューした。19歳で初めてタイトル挑戦者となって20歳で竜王となり、以来、毎年タイトル戦を行ってきている。
自分が30歳になった頃からは対局相手が後輩になることが増えてきた。最近では自分より上の世代とタイトル戦をやる機会は少なくなっている。それが自分が年を重ねるということであり、時代が移り変わっていくということなのだろう。
昔はあまりそういうことはなかった気がするが、いまは世代によって強さの質や将棋のスタイルが違ってきている。
アナログ世代、デジタル世代に分けられるのは、将棋界も一般社会と変わらない。
羽生世代の棋士が十代の頃はまだ一般家庭にパソコンは普及しておらず、羽生世代よりひと回りほど下になる私の世代あたりが一つの分岐点になる。
一般家庭にパソコンを普及させるうえで大きな役割を果たしたといわれるウィンドウズ95が登場したのが私が11歳のときだ。中学、高校と進んでいく中でパソコンが普及していったので、私がプロになった段階ではまだ、将棋とパソコンの親和性は低かった。
小学校1年生か2年生の頃にファミコンの将棋ソフトをやってみたらあまりにソフトが弱くて、すぐにやめてしまったこともある。そのため「コンピュータは将棋に向かない」という印象を持っていた。
ブロードバンド化が進んだのが21世紀を迎えた頃といわれるので、ちょうど私がプロになった時期になる。それからしばらくしてインターネットを使った対人将棋の利用者が増えていった。それを始めた最初の世代がいまの30代であり、私もそこに含まれる。
いまの20代の人たちが10代の頃、AIが一気に発達していったので、20代半ばより下の人たちからはアナログ色が薄くなっている印象がある。
いまの10代、20代前半はあきらかなAI世代といえるだろう。